子どもの幸せを願うように、お母さん自身の幸せも大切にしていい

子どもが学校に行けなくなったり、家にこもるようになったりすると、お母さんの毎日は、子どものことでいっぱいになってしまうことがあります。

今日はどんな様子で過ごしているだろう。何か困っていることはないだろうか。この先、どうなっていくのだろう。子どものことが気になって、頭から離れない。自分の楽しみや休む時間は後回しになり、心から笑うことも少なくなってしまう。

「この子が幸せになってくれれば、それでいい」

そう思うのは、わが子を大切に思っているからこそですよね。

でも、少し立ち止まって考えてみてほしいことがあります。

お母さん自身の幸せは、どこにありますか?

「まず大人が幸せになって」という子どもたちのメッセージ

以前、川崎市の子どもの権利条例づくりに関わった子ども委員会から、こんなメッセージが発信されました。

「まず、おとなが幸せにいてください。おとなが幸せじゃないのに子どもだけ幸せにはなれません。」

また、NHKドラマ『ひきこもり先生』の中にも、子どもが大人に向かって「まず大人が幸せになってよ!」と伝える場面があります。

一つは子どもたちが実際に発したメッセージで、もう一つはドラマの中のセリフです。出どころは違いますが、どちらの言葉にも、立ち止まって考えさせられるものがあります。

子どもたちは、大人に幸せでいてほしいと思っている。

子どものために一生懸命頑張っているお母さんに、この言葉を届けたいと思います。

お母さん自身の気持ちは、後回しになっていませんか?

子どもが苦しんでいるときに、自分だけ楽しむなんてできない。子どもが元気になっていないのに、自分が幸せになっていいのだろうか。

そんな気持ちになることもあると思います。

子どものことが心配で、自分のことを考える余裕がなくなってしまう。子どものために何かできることを探し、少しでもよい方向に向かうようにと頑張る。

けれど、心に余裕がなくなると、普段なら受け流せることが気になったり、子どものちょっとした言葉や行動に不安を感じたりすることがあります。その不安から、つい声をかけすぎてしまう。子どもの反応を見て、また自分を責めてしまう。そんな循環が生まれることもあります。

もちろん、子どもの状態がすべて親の関わり方で決まるわけではありません。子どもには子ども自身の事情や、さまざまな背景があります。ただ、お母さんの心に少し余白が生まれることで、子どもの言葉を落ち着いて聴けたり、今までとは違う見方ができたりすることはあります。

だからといって、子どものためにお母さんが幸せにならなければいけない、ということでもありません。

子が宝なら、親もまた宝

私が大切にしている言葉があります。

「子が宝なら親もまた宝」

これは、精神科医の明橋大二先生の言葉です。

以前、先生に直接お会いしたとき、本にサインをお願いしました。そのときに書いてくださったこの言葉が、私の胸に深く残りました。

子どもは、かけがえのない大切な存在です。けれど、それは親も同じです。

子どものことが心配で、何とかしてあげたいと思うお母さん。自分のことは後回しにして、子どものために一生懸命頑張っているお母さん。

私は、子どものことももちろん気になります。でも、それと同じように、今、目の前で話をしてくださっているお母さんのことが気になっています。

これまでどんな思いで過ごしてきたのだろう。どれほど頑張ってきたのだろう。誰にも言えなかった気持ちを、ここで話してくださっているのかもしれない。

子どもの状態をどうにかすることだけが、相談の目的ではありません。

まずは、お母さん自身が安心して自分の気持ちを話せること。これまでの頑張りや、言葉にできなかった思いも、そのまま受け止めてもらえること。

お母さんもまた、大切にされていい存在です。

お母さんにも、お母さんの人生がある

以前、あるお母さんが、こんなふうに話してくれたことがあります。

「自分が幸せになったってしょうがない。この子が幸せになることが私の願いなんです」

その言葉から、わが子を思う気持ちが伝わってきました。

でも、子どもの幸せを願うことと、お母さん自身が幸せになることは、どちらか一方しか選べないものなのでしょうか。

親と子は、親子であっても別々の人間です。感じ方も、考え方も、得意なことも違います。自分にとって簡単なことが、子どもにとっては難しいこともあるし、反対に、自分には難しいことが子どもには簡単にできることもあります。幸せの形だって、きっと違います。

お母さんが幸せだと思うことと、子どもが幸せだと思うことが同じとは限りません。

子どもの気持ちを大切にするように、お母さん自身の気持ちも大切にしていい。子どもの幸せを願うように、自分の幸せも願っていいのです。

好きなことを楽しむ。ゆっくり休む。友人とおしゃべりをする。自分が心地よいと思える時間を過ごす。そんな何気ないことも、お母さん自身の人生を大切にすることにつながっています。

子どもが今、思うように動けなくても、お母さんまで自分の人生を止めなくていい。子どものことを大切にしながら、自分のことも大切にしていいのです。

子どもを変えるために、お母さんが幸せになるのではありません。お母さん自身も、幸せに生きていい一人の人だからです。

子どもが宝なら、親もまた宝。

子どもの幸せを願うように、お母さん自身の幸せも願ってみませんか。