
山形県で子どもの引きこもり状態に寄り添う親の会「さんろくまる.」、Zoomで子どもが引きこもり状態であろうとなかろうと幸せに生きる親の会「オンライン360」を開いている、NLP子育てコーチです。
私の学びのきっかけと家のこと、現在の活動について、インタビューをしていただきました。改めて思います。子どもの話を聴ける大人の存在って、大事です!
NLPを学んで「聴く」ことを覚えました
――子どものひきこもりを相談できず孤立している方と繋がりたいということですが、まずは鈴木さんの話から聞かせてください。
鈴木(以下、鈴):私には息子が2人います。どちらの子も学校に行けなくて、いわゆる「ひきこもり」になりました。その責任が自分にあると勝手に思い込み、自分は一生この子たちに償って生きていかなければならないと思っていました。
――なぜ、お子さんがひきこもりになったことを、自分の責任だと思われたんですか。
鈴:問題行動があったり、大人の期待に沿っていない子どもに対して、よく「親の顔が見てみたい」と言いますよね。それを鵜呑みにしてしまって、息子がこうなったのは私のせいなんだと思っていました。私の関わり方が悪いせいだと信じていたんですね。
――株式会社CPI(旧・NLP研究所 以下、CPI)と出会ったきっかけは何でしたか。
鈴:検索していて見つけました。今、思うと変なところに行かなくてよかったです。恵先生のところでよかった(笑)
――NLPを始めてどんな変化がありましたか。
鈴:まずは子育てコーチから学び始めたのですが、自分がやってきたことが、良くない結果を作り出していたことに、講座を受けてから気がつきました。
これは、やり方の話で、親のせいとか、親が良くないという事ではありません。
それまでは息子の中でも、私と同じことが起こっていると思っていたんですね。表情を見てパッとしない時は、今よくないことを考えて自分を責めているのだろうとか。文句を内側にいっぱい溜めていて、私のことも責めているんじゃないかとか。そう思って、更に妄想が続いてしまっていました。
そこから息子には息子の考えがあって、私と息子は別々の人間だということが、段々わかるようになってきました。そこで「聴く」ということを覚えましたね。

――私が勤めている予備校にも、そういう保護者とお子さんがたくさんお見えになります。
鈴:よく本などにも書いてありますよね。お子さんに質問しているのに、親が代わりに答えてしまう。そういう母親でした。
――なぜ、そうなってしまうのでしょう。
鈴:この子のことは、私がわかっていると信じているんです。本人に何が起こっているか、母親である自分が誰よりも知っていると思っているんですね。
――実際はどうなんでしょう。お母さんはやはり息子さんのことを誰よりもわかっているのでしょうか。
鈴:それが、違うんですね。私という母親の視点、思い込みで喋っているだけなんです。
――いつ、そのことに気づかれたのでしょうか。
鈴:子育てコーチの講座を受けていくうちに気づきました。講座の中で自分のアウトカム(目標、願い)を言う時に、繰り返し「それは親の願いです。やるのは誰ですか?」と聞かれます。でも、子どものことに悩んでいて、子どものことをなんとかしたいという状態ですから、最初はそう言われても「えっ?」という感じです。どうして子どもの相談をしているのに、自分の話になっているんだろう、と。これは私以外の方でもよくあります。
――そこは難しいですよね。
鈴:でも、親のアウトカムと子どものアウトカムは違う、ということに気づかないと進まないんです。子どもが主体性のないままに親のアウトカムを叶えるために生きてしまうと、数年先に「なんか苦しい」とか「今まで我慢してきた」ということになってしまう。
――鈴木さんはNLPを学び始めてどのぐらいで変わられましたか。
鈴:4年ぐらいでしょうか。最初は、頭では「ああ、そうなんだな」とわかっても、なかなか腑に落ちないところがありました。学び始めて3年目ぐらいの時に、子どもに「お母さん、変わったね」と言われるようになりました。家庭も変わりましたね。以前はそれぞれ自分の話をしようと一生懸命だったんですが、相手の話を聴こうとする会話に変わっていることに気づきました。

――家族は難しいですよね。
鈴:家族だと遠慮も配慮もないので、思いついたことを今しゃべりたいという欲求がありました。また、私たち夫婦ぐらいの年になると「後にすると忘れちゃうから今、言っておくね」というのもあります。皆が自分のマップでしゃべるから、相手にどう伝わったかということまで確認していなかった家族だったと思います。
長男が私の姿を見て「自分も学びたい」と言い出した
――今も「親の顔が見てみたい」と思われていると恐れていますか。
鈴:うーん、そういう考え方も世の中にはあるなあ、という感じです(笑)
――山形に住んでいらっしゃると思うのですが、東京のCPIで学ぶのは大変でしたか。
鈴:コロナ禍になる前は、ほぼ月1回東京に行って学んでいました。前の夜にごはんをまとめて作って、やることをやってから朝イチの新幹線に乗るという感じでした。
――今はオンラインですか。
鈴:マスタープラクティショナーの2年目からはZoomになりました。正直、コロナになってからの方が楽に学べています。ありがたいことです。
――息子さんが今、マスタープラクティショナーコースで学んでいらっしゃると聞きました。
鈴:はい、長男が学んでいます。
――やっぱりお母さんが学ぶ姿を見て、自分も学ぼうと思われたのでしょうか。
鈴:東京でのセミナーから帰って来るたびに、学んだことは夫や息子と話していました。こんなことを勉強して、こんなことがすごかったんだよ、とか。宿題の相手にもなってもらいましたし、私が変わっていく様子も彼らは見ていました。子育てコーチやその他の研修アシスタントを「怖い怖い」と言いながらやっているのも知っていましたね。
――そういう姿も包み隠さず見せていたんですね。
鈴:特に研修のアシスタントは最初すごく怖かったですね。ビジネスで活躍されている方々がたくさんいらっしゃる中で、私に何ができるだろうと思っていました。先生方に後押ししていただいたり、一緒に学ぶ仲間から力づけてもらったりして、「やってみよう」⇒「できた!」ということの繰り返しでした。
長男はそんな私の姿に勇気づけられたみたいです。「お母さんがあんなに恐ろしいことをやっていたのに比べれば大丈夫かもしれない」と言って、αプラクティショナーコースで学ぶと決めました。でも、普段はずっと家にいて、家族以外の人に会うことはないので、オンラインだとしても、知らない人達に会うというのはものすごいチャレンジだったと思います。
――長男はNLPを学んで変わられましたか。
鈴:変わりました。最初は画面でしゃべるだけでも緊張して、そこにいるだけでも大変だったみたいです。でも、皆さんにたくさん承認の言葉をかけていただいて、なんとか終えることができました。
――学校に行くよりも、オンラインで知らない人達と一緒に学ぶ方がハードルが高いと思うのですが、敢えてチャレンジされたんですね。
鈴:長男は学校に恐怖感がものすごくあるんです。私の「学校に行かなければならない」という思いを自分にシンクロさせていて、行けない自分をずっとダメだと責めていました。
――学校という形態がそもそも特殊ですからね。どんな子どもにもいろいろあるのが当然で、何もなく順調に行く人の方が珍しいと思います。
鈴:学校の先生はどちらかと言うと順調に行った人達ですよね。だから、自分の体験をもとに、子ども達にも当然のように学校に行くことを求めます。でも、それができない子どもが今の日本にはいっぱいいるということを知ってほしいです。
――小学校から高校までのどこかで、多くの子どもが勉強に身が入らなくなったり、無気力になったりする時期があると思います。多分あれはその子なりのレジスタンスなんでしょうけど。
鈴:そうです。学校に行って意味のないことを強制されるのが嫌な子どもは、本当にたくさんいると思います。でも、そこで多くのお母さん達が悩み、何とか子どもを学校に行かせなければと思っているんです。
――今は通信制の高校もたくさんあるし、徐々に多様性が認められるようになってきているので、本当に無理なら学校に行くのをやめるという選択肢もあると思います。
鈴:学校を退職後、不登校のことにずっと取り組んでおられる先生が、学校は会社で働ける人を量産するための団体だから、合わない子どもが出てくるのは当たり前だとおっしゃっていました。今の学校はどんどんやることが増えていって、それをこなすことが目的になっているので、こなせなくなって振り落とされてしまうと苦しいと思います。
子どもの話を聴ける大人を増やしていきたい

――会社でも理不尽なことがあったりしますよね。ご主人は会社員ですか。
鈴:昔は会社員でしたが、再生不良性貧血を患ったことをきっかけに退職して、私の兄がやっている農業法人で農業をしています。
――素晴らしいですね。農業は生きる基本ですものね。
鈴:もともと私の実家は農家で、それを兄が継いだので、夫はその農業法人を手伝っています。私の実家なので気遣いはいろいろとあるみたいですが、会社勤めをしていた時のような人間関係はなくなったので、精神的には随分と良くなりました。
――お兄さんはどんな方ですか。
鈴:兄は真面目ですね。ひとつのことをずっとコツコツやるタイプ。農業一筋で、幅広く長期的な視点を持って取り組んでいます。職場のみんなのことを考えている人だと思います。
――今後はどんな活動をしていきたいですか。
鈴:話を聴ける大人を増やしたいという思いがあります。お子さんが学校に行けなかったり、ひきこもっているお母さんとしゃべると、どうしても自分の願いを優先してしまっているんですね。「お子さんはなんて言っていますか?」と聞いても出てこない。出てこないということは、話が聴けていないということです。
話を聴ける大人の人が周りに増えてくれば子どもも楽だし、家庭にそういう大人がいれば安心もできます。近所に話を聴いてくれる大人がいたり、学校や職場に行った時に、そこで話を聴いてくれる大人がいれば安心できると思うんですね。安心できる場所が増えていくと、子どもも少しずつ生きやすくなっていくと思うので、そういう社会を目指していきたいです。
――最後に何か言い残したことはありますか。
鈴:私も息子のことでまだまだ向き合っている途中です。子どもが変わるにはお母さんが変わらなければならないということは、少しずつ世の中に広まっていると思うのですが、言葉の意味が抽象的なので、もっと具体的に伝えた方がいいのかなと感じています。
私が怖いと思いながらも新しい仕事や目標に向かっている姿を息子に見せることによって、息子も自分のチャレンジを続けています。もちろん上手くいく時もいかない時もあって、親の視点で見れば心配な時もあるのですが、息子が自分で歩けるようにサポートを続けています。
――今はどんな活動をしていらっしゃるのですか。
鈴:山形で子どもが引きこもりや不登校状態にある親の居場所として親の会を開いています。周囲から孤立していたり、なかなか人に相談できないお母さんと繋がって話を聴くことをしています。オンライン親の会も始めました。他には農繁期ではない夏と冬に講座を開いていますし、コーチングセッションもやっています。
山形でのコミュニケーション講座も、おかげさまで7回目まで行うことができました。10回目が見えてきたと思っていますが、話を聴く人を増やしたいので、100人達成するまでやり続けたいと思っています。